< GUEST & TALK Vol.10 >
〜Climbing Gym the FACTORY〜
初めてお会いした時から勝手にどこか同じ匂いのする方だと思っていました、確かに年代は同じですし触れてきた音楽もほどほどに近く、でもどこが同じかと聞かれると難しいのですが。言葉少ないのに近くにいるだけで不思議と心地良い、コミュニケーションとは言葉の数ではなくその人の存在そのものだと、林さんの周りには常に人が集っているという事がその人柄を全て表しているのだと思います。寡黙ですが笑顔がとびっきり素敵、真っ直ぐ全力なのにどこかゆったり見える、実際にお伝えした事はないのですが私もそんな風に生きたいと思える理想の姿を実は見ているのです。
GUEST:Climbing Gym the FACTORY オーナー:林 太輔さん〜
聞き手:企画室 佐藤 泰地、5555柴田 学也
佐藤:「え〜ボルダリングとは天然の岩石や、人工壁に取り付けられたホールド(手がかり)を自分の肉体のみを駆使して登攀するスポーツです。オリンピック競技にも加わったことで最近は耳目に触れる機会も増えたのではないでしょうか?」
柴田:「おっと謎の説明台詞からスタートだぜ」
佐藤:「というわけで今回は板橋区は常盤台のクライミングジム【the FACTORY】に来ています」
柴田:「というのも、ここのオーナーの林 太輔さんは昔からダイナミックオーディオを利用してくれていて、このジムの音響装置に関しても手伝わせていただきました。そんなわけで林さん、どうぞよろしくお願いします」
林:「よろしくお願いします」
柴田:「かれこれ10年近くなりますよね。初めて会ってから」
林:「え〜っと確か最初はあれを買い取ってもらいに行ったんですよ、Jeff Rowlandのアンプ。卵焼きが焼けそうなくらい熱くなるやつ」
佐藤:「出会った時点で既にそんなマニアックなものを持ってたんですね。
オーディオに凝るようになったのって何かきっかけがあったんですか?」
林:「いや音楽聴くからですよ(笑)」
佐藤:「知り合いにマニアなお兄さんがいたとか?」
林:「いや。ないっすないっす。結構なんでもそういうタイプなんですよ。
何かに興味を持つと、その頂点はどうなってるのか確かめたくなるっていうか」
佐藤:(わはは。生粋のクライマーだな)
柴田:「Jeffのアンプの頃はスピーカーなんでしたっけ?」
林:「え〜っと確かHarbeth…」
佐藤:「思い出した!それでJBL(4344MK2)に買い換えて、納品させてもらう時に僕は初めて会ったんですよ。で、その時に下手したら死ぬような山を歩く話とか聞かせてもらって」
柴田:「視界の悪い雪山を歩いていて、ふと気づいたら足場のすぐ近くが断崖絶壁だった話とか」
佐藤:「林さんは僕にとって最初に出会った生身の登山家だったなぁ。漫画とかで見たことはあったけど」
林:「いや、ふつうですよ(笑)ふつうの人間ですよ」
柴田:「クライミングの面白話とかないですか?」
林:「ん〜…あんまないっすよ」
佐藤&柴田:「あんまない(笑)」
佐藤:「まぁ”あ〜だこ〜だ言う前に登る”っていう感じのスポーツですもんね。やらない1000の理由 vs やりとげるたったひとつの意志っていう感じ」
林:「そうですね。全力を出すカタルシスっていうか、全力を出すのが楽しいって思えたら、この遊びは楽しいと思います。全力を出しても落ちるし(笑)」
佐藤:「はははは。通常安全に行うのが難しい種類の遊びですね」
柴田:「自分が全力を出せてるかどうかもあやしいしね」
林:「そうそうそう。全力ってのはなかなか出せないんですよ。全力を出せるかどうかはその人の技術や体力のレベルとは全然関係ないんですよ」
佐藤:「それぞれのレベルで全力を出す楽しさ、ということですね。う〜む自分自身が全力を出しているかどうかは常に己に問いたいね」
林:「全力が出せたとしたらたとえ落ちたとしても、すっきりするんですよ。当たり前ですけど」
柴田:「出会った頃は別のお仕事でしたよね。ジムをオープンしたのが?」
林:「2年ちょっと前ですね。もともとあったクライミングジムを継いだんですけど。店を始めて以来、帰って寝るだけになっちゃったから、あんまり家では聴かなくなっちゃって」
佐藤:「ほとんど毎日お店にいますもんね」
林:「そうですね。もう週8で(笑)」
佐藤:「そんなわけでこのジムがオープンする時にもオーディオをいれてもらったんですよね。
やっぱりジムを作る時に音楽は重要だなっていうのはありました?」
林:「それはかなり占める割合の大きなところでしたね。目に見えないものが好きなんですよ。音って目に見えないじゃないですか」
佐藤&柴田:「うおおー」
林:「ホールドってカラフルで形も色々あって派手なんですけど」
佐藤:「まぁ非日常的で、ある種異様な光景ですよね。でも確かにファクトリーのホールドのレイアウトって、コースにストーリー性を感じるんですよね」
柴田:「おっなんか”やってる人”っぽいコメント」
林:「あと実はこの床とかもちょっといい木を使ってたりとか、素足で乗るから。目に見えるものにも拘ってないわけじゃないんですけどね」
佐藤:「そんななかでLINNのスピーカー(Majik 109 custom color)を選んでもらったわけですね。選択のポイントは?」
林:「いやそれはねぇ。もう柴田さんのオススメということで(笑)」
柴田:「ありがたいです(笑)最初に相談もらった時に、ちょっと今までにないことをやってみたいというのがあって、
ホールドとかってカラフルだから、スピーカーもカスタムカラーを提案したんですよ。結果、日本でここにしかないものができました」
佐藤:「色もいいしもちろん実力もあるもんね。音源はItunesからのAirplayをSneaky DSMで受けてるんですよね」
林:「そうです。ディスプレイでかかってる曲のジャケットを映してたりもしてるんですけど、”この曲いいですね”みたいな感じで、やっぱり音楽好きな人は多いです」
佐藤:「装置にまで言及する人はいないでしょう?」
林:「装置までは流石にないですね。逆にみんなスピーカーの存在に気づかないんですよ」
柴田:「あっそれはなかなか良いですね」
林:「そう。そっちの方が嬉しいですね。たとえば黒くて大きいスピーカーとか置いちゃうと音楽よりも”すごいスピーカーですね”みたいな話になっちゃうけど」
佐藤:「かかってる音楽も幅広いですもんね。選曲は林さんでしょう?」
林:「ほぼ100%僕が選曲してます。クライミングって比較的じっとしてる時間が長いスポーツだから、人が登っているのを見たり、登り方を考えてたりだとか」
佐藤:「誰かが主体的にかけている音楽とそうでない音楽だとやっぱり聴こえ方が違いますよね」
柴田:「林さんの選曲、ディープだよ(笑)【緑黄色人種】とか」
林:「ふふふ。あっ実は表のイラストもShingo2のジャケット描いた人にやってもらったんですよ」
柴田:「えっ!ああ〜言われてみれば!」
佐藤:「目に見えるものを通じて、目に見えないものを感じる。最近体がなまったなぁ〜(オーディオの聴き過ぎで)という方はクライミングで全力を出してみてはいかがでしょうか?
というわけで柴田くん。もうひと登りですよ!」
柴田:「明日ぜったい筋肉痛」
後記)決して怠けていた訳ではありませんが、久しぶりに伺いまして初級コースのいくつかにトライし、それから面白いトレーニングを少しだけ教えてもらいました。結果、想像はしていたのですが恐ろしい程の筋肉痛。。どれだけ体の筋肉を休ませ過ぎていたのだろうと、甘やかし過ぎた己の体を見つめ直しつつ、がしかし歩く度に味わう節々の痛みがそのうち快感に変わるとは。the FACTORYが林さんそのものであると実感すると同時に、そこに集う人達で成り立っているとも思える、絶妙なバランスがここにはあるのだと思うのです。こういう場所があったら嬉しい、そこに音楽が少しでもお役に立てているとすれば、こんなに嬉しい事はないのですから。さぁ皆さん、カラダはしっかり動かしてくださいね!
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