< GUEST & TALK Vol.9 >
ortofon 100th Anniversary 〜Intro〜
「Stylus & Groove」
CDプレーヤーの再生はレーザーの反射からデジタルデータを作成し音声信号を作りますが、レコードに刻まれた溝と針との物理的な接触と振動から音声信号を作り出すのがアナログレコード。針と溝という関係は140年ほど前の蓄音機の発明から何ら変わっていない。盤に保存されたものを解凍することにお互い目的は同じ、しかし同じ音楽を再生するのにここまで異なる手段が存在していること自体が現代の我々にとってどれだけ幸せなことか。アナログレコードで言うと、音の始まりとなる機械的な動きのカートリッジ、これに魅力を感じない人はいないと思うのです。音楽を愛する、レコード熱の強い方ならば一度は手にされたことがあるであろう ortofon は今年で100年を迎えます。現代に残るステレオカートリッジの基本構造を生み出したブランド、また新たな100年を刻むカートリッジメーカーとしてまずはこの100年を称えつつ、100周年記念モデルへの興味をオルトフォン・ジャパン坂田さんにお聞きすることに。
GUEST:オルトフォン・ジャパン 坂田 清史さん
聞き手:企画室 佐藤 泰地、トレードセンター厚木 繁信、5555柴田 学也
坂田さん「100周年記念モデルはダイヤモンドカンチレバーです」
柴田「ダイヤモンドカンチレバー?!カンチレバー全部ダイヤモンドなの?」
坂田さん「共振速度が速いんですよ。しかも今回、単結晶から削り出してます。スタイラスチップは一体成型ではないんですけどね。針先にレプリカント100を使いたかったので」
佐藤「名前めちゃかっこいいな。カンチレバー自体はキラキラしてるんですか?」
坂田「いやっ光ってはないです真っ黒です。透明にもできるんですけど、焼きを入れなければいけないんで、焼きを入れると特性が変わっちゃうんです」
厚木「危ないよ透明だったら(笑)見えないもん。そうかぁ〜 ortofonもダイヤモンドカンチレバーかぁ!」
坂田さん「ただしダイヤモンドって暴れ馬的な性質もあるんですよ、硬すぎて。そこでダンパーが重要になってくるんですけど、専用のラボを工場内に併設しているというのが ortofon 最大の強みでして、カンチレバーの特性に最適なものを、その為だけに作ることができるんです」
佐藤「カンチレバーを根元で支えてるあのちっちゃいゴムを?!」
坂田さん「そうです。ダンパーは豆粒、いや胡麻くらいのサイズのめちゃくちゃ小さいゴム部品ですけど、これを自社で生産できるのはおそらくortofon だけだと思います。狙った精度で作れるので、医療機器用のパーツとして供給したりしているそうです」
佐藤「すごいですね。”ホスピタルグレード” なんていって逆はよく耳にしますけど」
厚木「ダイヤモンドの良さを活かしつつ、弱点をカバーするダンパーを作るわけだね」
柴田「軟骨みたいな」
坂田さん「そうなんです、そこがセットになって初めてカートリッジの良さが活かせる、いわば肝なんですよね」
厚木「でもオレ的には、テンションワイヤーをどうやってつけてるのかが気になるよ。ダイヤモンドにさ」
坂田さん「そこは技術ですね。センターポジションに戻すための絶妙の力でカンチレバーにテンションをかけてます。元々その一連の方法を最初に編み出したのがSPUの開発者だったわけです」
佐藤「ティッシュの箱ぐらいのサイズだったら分かるけど、その複雑な構造をこんなに小さいもので作っちゃってるんだもんな〜」
厚木「ortofon が根本的な原理を作ってしまったからね。そこから全てが始まった」
佐藤「ステレオ用カートリッジっていうのは、ステレオ盤と同時に開発されたんですか?」
厚木「1950年代当時カッティングマシンを作っていた三社が、開発したんだよ」
佐藤「三社とは!?」
厚木「WestrexとNeumann、そしてOrtofon。そのうちWestrexの10AとNeumannのDSTはダイレクトカップル(スタイラスの直上にコイルがある)だったんだよね。針圧なんか8gとか6gもある。もう作れないよね。だから針圧が3gってのは画期的だったわけよ」
坂田さん「そしてSPUだけが生き残って、生きた化石になりました」
柴田「残っているってことにはやっぱり理由があるんですね〜」
この続きは6月9日(土)の試聴会にて、ご用意しますレコードに針を落としてその再生と音で皆様と楽しめればと思います。ortofon SPU と素敵な音楽をご準備しまして、皆様のご参加を楽しみにお待ち致しております。