< Guest & Talk Vol.6 >
LINN URIKA 2 発売開始。
ゲスト:LINN JAPAN 山口 伸一氏
聞き手:ダイナミックオーディオ 企画室 佐藤 泰地・3F柴田 学也・トレードセンター厚木 繁伸
D柴田「ということでレコードですよ」
D佐藤「え?」
D柴田「いやぁ~ちょっと冷静になって考えてみても、ちょっとこれはすごいことなんじゃないかと思ってて」
D佐藤「一体なんのことを言っとるんだい?」
D柴田「いや、いままでこんなのは…ないよね?僕が知っているオーディオの歴史は限りがあるけども…」
D佐藤「具体的に言いなさいよ(笑!」
D柴田「フォノイコライザーがデジタルッ!」
D佐藤「フォノイコライザーがデジタルッ!?」
D柴田「LINNの新型 URIKA 2がデジタルフォノイコライザーなの!」
D佐藤「つまりそれは、アナログでフォノイコライジングした信号をADコンバートして伝送する…なんていう生易しいものではなくて、RIAAカーブそのものをデジタルで作るということですね?」
D厚木「そうなのです」
D佐藤「あっ、厚木さん」
D厚木「RIAAカーブってのはだいたいLとCで作るもんだから」
D佐藤「LとC?」
D厚木「コイルとコンデンサー」
D佐藤「ああ、物質的な回路ということですよね」
D厚木「うんネットワークとおんなじだから。基本的にLとCと、抵抗とかでカーブを作るの」
D佐藤「なにしろ何かしらのマテリアル、物質を挿むことによって、電気信号を変質させてつくっている、と」
D厚木「そう。アナログの信号をね、変質させてつくってる」
D佐藤「それをとうとうデジタルでやってくれるようになっちゃった。そんなものが今まであったかということだけど、ないんだろうね。厚木さんの記憶にあります?」
D厚木「ないないないない」
D佐藤「…でもさ、たとえば僕がアナログ狂信者だとしてね、だとしたらですよ”せっかくのアナログをなんでデジタルにしちゃうの?”っていう疑問は当然あると思うんですよ」
LINN山口さん「じゃあどういうものか、ちょっとご説明しましょう」
D佐藤「あ、山口さん」
D柴田「新たに知って得するような話があるんですか?」
LINN山口さん「いや、得することだらけでしょ(笑) まぁ新しいLINGOの話からなんですけど、従来のLINGOがモーターに送り込んでいた動力用の波形は、もちろん優秀なものではあったんですが、それでも測定してみると本来あるべき50㎐のピーク以外に、倍数になる100㎐とか150㎐といったところに、ほんの少しだけ歪みが出てしまっていて、それはアナログ方式の限界でした。今回の新しいモデルは、まず50㎐のサインウェーブをデジタルで作るんですよ」
D柴田「動力をデジタルで制御しているということですか?波を作って」
LINN山口さん「その波の大元をデジタルで作っているということです。デジタルで作った理想的で正確な50㎐の波形をDACに送り込んで、DACでアナログに変換された波がモーターを駆動するアンプに行って、そのアンプがモーターを回すという仕組みです。で、光学式のセンサーが実際の回転をモニターして、温度偏差やモーターのクセまでフィードバックして補正するという」
D佐藤「なんてこった…これでもまだ動力系の話ですよね(笑」
LINN山口さん「LP12というのはメカニカルな精度を極めてきたわけですけど、さらにエレクトリカルな精度が加わったということです。で、いよいよURIKA 2の方の話ですけれども、フォノステージは一般的に4つの仕事によって成り立っています。
1:インピーダンスをマッチさせる(ロード)
2:増幅する(ゲイン)
3:低域を持ち上げて、高域を減らす(RIAA)
4:サブソニックフィルターをかける」
D厚木「はい。その通りですね」
LINN山口さん「今までのURIKA(アナログ)はどういうことをしていたかというと、ロードに関してはLINNのカートリッジに元々あわせているので調整項目に入っていません。まず最初の増幅で全体をドーンと持ち上げつつ高域だけ減らすということをやっていました。2度目の増幅は低域側だけに施します。で、その後いっぺんに、ではなくて、2回に分けてサブソニックフィルターをかけるということをやっていました」
D柴田「その細かく2回に分けるというのは、何かいいことがあるんですか?」
D厚木「アナログはいきなり急峻なカーブを作ることができないんだよ。だからこれはテクニックだよね」
LINN山口さん「ええ。他社にはおそらく3回に分けたりしてるのもあると思いますよ。分からないですけどね。で、新しいURIKA 2はですね。ロードも調整できます」
D柴田「他社製のカートリッジにもマッチできるということか!」
LINN山口さん「そうです。それもディップスイッチやロータリースイッチとかではなくてKonfig 上で設定できます。ただ、この段階ではまだDACに入れるには信号が小さ過ぎるんですね。なのでまずは今まで同様ゲインを上げたいんですが、あまりアナログの仕事を増やすとデジタルのメリットが少なくなってしまいますので、高域は増幅せず、その他も今までの10分の1程度しか増幅しません」
D佐藤「ここまではアナログ処理ですよね」
LINN山口さん「そうです。そしてここからはデジタルなので、もう全てがいっぺんに行われます。RIAA補正とサブソニックフィルターは一度にやるんですよ。で、ここからがぼくも驚いたんですけど、このとき同時に、それ以前に通過したアナログセクションにおける各部品の個体偏差をデジタルで補正するんです」
D佐藤「うわぁぁぁぁぁ、まさにさっき厚木さんと話してたコンデンサーとかコイルとか…」
LINN山口さん「アナログの場合、どんなに理想的な回路を設計したとしても結果はいつも違うんですよ」
D佐藤「物体に頼る以上そこに誤差があるけど」
LINN山口さん「その誤差を測定してデジタル領域で揃えちゃう」
D柴田「すぐぉいね。こりゃあ相当アナログ好きの人から嫌われるわ(笑)極端な話もうパーツ関係ないじゃん」
D 佐藤「アナログの”あたたか味”が消えちゃう!(怯」
D厚木「デジタルが冷たいって誰が決めたのよ。俺にとってはチャレンジしてるかしてないか、の方が問題であって、”ああ、すごいことを始めたな”っていうのが率直な感想だけどね。聴くのが楽しみだよ。ほんとに楽しみだ」
D柴田「どうする?いままで聴いてたレコードからびっくりするような”ナニコレ”みたいな音が出てきたら」
LINN山口さん「出ますって (笑)」
さて、この続きは皆様と一緒にスプリングフェスティバル「LINN URIKA 2 〜レコード再生の新境地〜」の時間で検証 & 楽しみたいと思います。そのサウンドとは一体どのようなものなのでしょうか….。